先日は成年後見制度のうち「任意後見制度」について書いてみましたが、
成年後見制度は、認知症になってしまうと(不動産関係では特に)
制度的に限界な面があります。
そこで今日は、新しい仕組み「家族信託」について、
元不動産屋の私が2~3分で読める程度に書いてみたいと思います。
家族信託とは
「家族信託」とは、
将来認知症など老化が進む事を見越して、親がまだ判断力のある
元気なうちに、自分の老後や相続に備えて信頼できる子などに
財産の運用管理処分を託す仕組みです。
①委託者:財産の所有者、運営管理を委託する人
②受託者:委託を受け、運用・管理・処分できる人
③受益者:財産から利益を受け取る人
この3つが家族信託の当事者となります。
例えば、不動産ですと下記の様な感じになります。
①母親(委託者)が息子に空き家の管理・運用処分を委託する
②息子(受託者)が母親からの委託を受け、
実家の空き家を「賃貸」・「売却」に出し、不動産屋さんとの
やり取りをする
③母親(受益者)が「賃貸」・「売却」の利益を受け取る
家族信託契約を結んでおくと、母親が将来認知症になっても、
親の財産や家の活用を子が運用・管理していく事が可能です。
「成年後見制度」と「家族信託」のちがい
ここでは、「成年後見制度」と「家族信託」のちがい
を見ていきましょう。
◆成年後見制度
①親の状態
認知症など、意思判断能力が低下した状態
②効力の発生原因
家庭裁判所への申し立て
③財産を管理する人
成年後見人(弁護士・司法書士など)
④身上監護
親の生活に関わる契約や手続きを行う事が出来る
(老人ホームの契約・病院への入院・生命保険の解約など)
⑤財産の積極的運用・処分
財産を維持しながら、「本人のメリットになる事」に関しては
裁判所の許可を得て支出をすることが求められる。
積極的な投資・運用や合理的な理由のない売却など
は認められない。
⑥不動産の処分
親の家の売却は、老人ホームへの入所費用の
捻出などの「合理的な理由」が必要
◆家族信託
①親の状態
元気で意思判断能力がある状態
②効力の発生原因
親と子の間で「家族信託契約」を締結する
③財産を管理する人
受託者(家族など。自由に決められる)
④身上監護
信託された財産の管理と処分を行うのみの為、
身上監護機能はない。
※「身上監護」…生活全般に関する法律行為を行う権利のこと
⑤財産の積極的運用・処分
受託者の権限内であれば、信託目的に沿った自由な運用・目的
に沿った自由な運用・管理・処分をする事が可能
⑥不動産の処分
受託者の権限内であれば、「売る」「貸す」などの処分が可能
親の空き家を活用するベストな選択とは
前章の違いをさらにまとめると、
「家族信託」 で出来ること
・受託者の権限内であれば、親の家を売却、建て替え、
アパート経営などの利活用…〇
・親の生活全般に関わる契約・手続き…×
「成年後見制度」 で出来ること
・裁判所の許可があれば、親の家を売却、建て替え、
アパート経営などの利活用…△もしくは×
・親の生活全般に関わる契約・手続き…〇
という事でした。
つまり、親の空き家を活用するベストな選択とは、
①親がまだ元気なうちに、将来の「意思判断能力の低下」
を見越して「家族信託契約」を結んでおく
②親が認知症になったら「成年後見制度」を始める
という事になります。
まとめ
ポイント ・家族信託とは ・成年後見制度と家族信託のちがい ・親の空き家を活用するベストな選択とは
今日は、「家族信託」について書いてきました。
「家族信託契約」と「成年後見制度」を状況に応じて
上手く活用していきましょう。
まだ新しい制度ですので、専門家といっても
詳しい先生と詳しくない先生に分かれます。
①家族信託に詳しい司法書士を選ぶ
②家族間で揉めそうなら家族信託に詳しい弁護士
に相談などをしながら契約を進めていく
という事が大切ですね。
最後までお読みいただきましてありがとうございました!